示談したいと言われたら
示談という言葉は、法律の中にはありません。裁判外での当事者の話し合いが示談です。例えば交通事故が起こって加害者の被害者に対する損害賠償が必要になった場合など示談が行われます。
示談は、和解契約の一種です。和解契約とは、紛争を解決するためにお互いに譲歩した条件で締結した契約のことを言います。示談が成立した後に、当事者の一方が勝手に示談の内容を変更することはできません。当時者が示談の中で示談書を証拠として提出することが出きます。
勝訴判決を得れば強制執行をすることが可能です。また、示談の内容を強制執行認諾文言付きの公正証書に記載しておけば、金銭の支払いについては訴訟を得なくても強制執行をすることができます。
公序良俗(社会一般の道徳や秩序)に反するものは無効になります。
示談の内容についても当事者に認識の誤り(錯誤)がある場合も、示談は無効になります。
何かの、トラブルに巻き込まれ、相手から示談を言われた場合、損害額が確定するまで示談交渉を待ってもら
うようにしましょう。
交通事故の場合、医師の診断が出ないうちは治療費にいくらかかるか確定しません。損害額が確定してから本格的に示談交渉を置こうなうようにします。
示談をするメリットとは、
示談は、費用が安く済み、期間が比較的短くなります。そして、円満な解決が期待でき、人間関係を傷つけずに解決できる可能性があります。
しかし、示談を行う場合は、一定程度の法律知識が必要です。法律がどうなっているか、裁判例がどうなっているかという知識がなければ、妥当な解決点を見つけることは困難です。
法律知識があるものと、ないものとの示談交渉は注意が必要です。弁護士の力をかりることも視野に入れるべきでしょう。
また、相手方が本当に信頼できるかどうかを見極める必要があります。示談で決めた内容を相手が守らなければ、訴訟で勝訴判決を得てから強制執行をしなければなりません。中には、ただ時間を稼ぐために示談交渉を行う人もいます。そのような誠意のない相手に対しては、示談交渉を行わず最初から訴訟を提起するほうが良い場合があります。
示談が成立したといえるには
示談は和解契約の一種です。契約は口頭でも成立するので、和解契約の一種である示談も口頭で成立します。しかし、口頭で示談が成立したからといって示談の内容を文書にしておかないと、証拠がないためにどのような内容の示談が成立したかについてトラブルになる可能性がああります。そのため、示談が成立した時点でその内容を書面化しておきましょう。
示談解決に向いているもの
交通事故での損害賠償を決める際に示談交渉がおこなわれるケースが多い。または、賃貸借契約をめぐるトラブルや売買契約(売掛金の回収)をめぐるトラブルが生じた際にも行われ、刑事事件では示談が成立したかどうかが起訴、不起訴に影響します。
示談に向かないトラブルもある
示談は、お互いが譲歩してその間にある争いをやめることであるので、相手と主張が真っ向から対立している場合は、示談でのトラブル解決は困難です。
相手が交渉に応じないときは、
示談を行うとしても相手が交渉の場に出てこないことも考えられます。このような場合には、何を請求するかを確定させた上で、請求の内容を記載した配達証明付きの内容証明郵便を相手に送付しておくとよいでしょう。
内容証明郵便を送ることで、相手が、態度を硬化する可能性もありますので、送るまでに、電話や手紙で示談交渉にむけての努力をする必要があります。
刑事事件と示談の効果
刑事事件絡みで示談が行われることがあります。刑事裁判を提起するかどうかは、検察官の判断によって決められます。起訴するかどうかの判断では、加害者と被害者との間で示談が行われるかどうかも考慮されます。
それほど重くない罪で示談が成立していれば、検察官が刑事事件として起訴をする可能性は低くなります。
例えば、交通事故のケースは、示談が成立しているかどうかが検察官の起訴・不起訴に大きな影響を与えます。
また、強制わいせつ事件や強姦事件は、被害者の告訴がなければ検察官は起訴することができません。示談が成立すれば被害者は告訴をせず、加害者は刑事責任を問われませんので、示談が成立するかどうかが重要であるといえるようです。
示談交渉をする際には
示談の際に、相手との人間関係・信頼関係に配慮しながら交渉を行います。示談はあくまでも話し合いですので、相手との信頼関係を構築できなければ、示談をまとめることは難しいといえます。
交渉術が必要な場合もあるようです。
話し合いの場では、相手の落ち度だけを指摘するのではなく、相手の立場に立って考えることが必要です。自分たちに落ち度があったのならば、その点についてはきちんと謝罪するべきでしょう。
また、相手が求めていること、相手の性格、事実関係の情報など、十分な情報収集を行うことが必要なようです。
交渉の過程では、だだやみくもに相手を追い詰めるのではなく、逃げ道を残しつつ、交渉を進め、粘り強く、穏やかに相手とのコミュニケーションを図り、その中で、お互いの妥協点を見出して行くようにするようです。
期限を区切ることも大事で、それでも示談がまとまらなければ調停や訴訟に移行します。
訴訟になれば、示談と比べて多くの時間と多額の費用が必要になります。訴訟に移行するには、大きなコストがかかることを覚悟しなければなりません。
示談交渉を行う際には、時効に注意しなくてなりません。示談交渉を行っていれば時効は中断するというものではありませんの注意しよう。
代理人が必要な場合
示談交渉を行う際に、代理人を立てることもできます。
交渉が苦手な人は、自分で交渉するよりも代理人を立てて示談交渉に臨む方が得策な場合があります。代理人を立てる際に注意すべきことは、原則として交渉によって報酬を得ることができるのは弁護士だけという点です。(140万円以下の金額で司法書士も示談交渉でき、行政書士については、法律的な意見を求めることはできますが、報酬を支払って代理人になることはできません。)弁護士以外の者が示談交渉の代理を行い、それによって当事者から報酬を得ることは弁護士法によって禁止されています。代理人を立てなくても、第3者に示談の仲介に入ってもらうケースも考えられます。仲介人に間に入ってもらえば、第3者の客観的な意見を求めることができ、示談交渉をスムーズに進めることができる場合もあります。
示談書作成時の注意点
示談がまとまった場合には、示談書を作成します。口頭で示談契約を行ったとしても、その示談契約は効力を有します。しかし、後日に示談契約の内容について争いになったときには、書面がなければトラブルになる可能性があります。示談の内容を書面にしておけば、後日にトラブルとなたとしても、書面が証拠になるので示談の内容について争うことはできなくなります。
示談書の形式には、法律に決められた型あるわけではありません。
しかし、示談の内容、示談を行った日、住所、氏名を記載し押印をしておくようにしましょう。
契約書の中には印紙税の貼付が必要な課税文書がありますが、示談書そのものは課税文書に該当しないため、原則として示談書に収入印紙の貼付は不要です。
ただし、不動産を譲渡するような場合は、不動産の譲渡に関する契約書として、収入印紙の貼付が必要になります。
また、示談の内容(金銭の支払い)を強制執行認諾文言付の公正証書にしておけば、相手が示談書で決めた内容を守らなかった場合には訴訟を経ずに強制執行をすることができます。公正証書にせず単に書面に示談の内容を記載した場合には、訴訟で勝訴判決を得なければ強制執行はできません。
示談書には、事実関係を正確に記載する必要があります。例えば、過去に行った売買契約について記載する場合には、「平成○年○月○日に締結した○○を目的とする売買契約」というように、契約内容を特定する必要があります。
また、示談書契約の最後には「当事者間には債権債務関係が一切ない」ことを示す一文を入れておきます。この一文を入れることで、当事者間のトラブルはすべて解決したことを示すことができ、後に示談の内容を覆すことができなくなります。
示談の内容として金銭を分割して支払う場合など、「1回でも支払いを怠った場合には、残りの全額を直ちに支払う」という内容を条項に盛り込んでおいたり、交通事故の場合は、後遺症を発症することを想定して、「後遺症が発症した場合には示談をやり直すこと、」あるいは「新たに損害賠償金を支払う」などの条項を入れておく必要があります。
賠償額はどのように算出するか
損害賠償には、財産上の損害と精神的な損害があります。財産上の損害には、実際に被害者が受けた損害(治療費や物の修理費など)と、得られたはずの利益が被害にあったために得られなかったという損害(働けなかったために受けられなった給料など)があります。
交通事故の場合は、損害額が定型化・定額化されています。
ただ、損害賠償の算定は難しいので、弁護士など専門家に相談するのがいいでしょう。