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相続の承認と放棄

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相続の承認・放棄

1、意義
民法では、相続について選択の自由を保障している。すなわち、相続人は、相続財産を全面的に承継する単純承認(920条)、相続財産の承継を否定する相続の放棄(相続放棄 939条)、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務・遺贈を弁済すべきことを保留して承継する限定承認(922条)、のいずれかを選択することにができる。
なお、相続の放棄をすると、その相続に関しては「初めから相続人とならなかったものとみな」されることから、遺産分割の協議に参加する等する必要がなくなる。(939条)

2、相続の承認又は放棄をすべき期間
ア、意義
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない(熟慮機関)。ただしこの期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる(915条1項)

イ、熟慮期間の起算方法
判例は、熟慮期間は相続人ごとに起算されるとしている。(最判昭和51.7.1)

ウ、、相続人が未成年者又は成年被後見人であるとき
相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、承認・放棄の熟慮期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算される。(917条)

3、相続の承認及び放棄の撤回及び取消し

ア、意義
相続の承認・放棄は、一度すると、熟慮期間内でも撤回することができない。(919条1項)

イ、民法総則・親族の規定による取消し
民法総則・親族の規定による取消し(例:制限行為能力者の単独行為、詐欺・強迫による取消し)はすることができる。(919条2項)
この取消権は、追認をすることができるときから6か月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年間を経過したときも、同様である。(919条3項)
これらの規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。(919条4項)

ウ、相続放棄についての錯誤による無効の主張
判例は相続放棄について錯誤による無効を主張することもできるとしてる。(最判昭和40.5.27)

4、共同相続人の限定承認
相続人が数人あるときは、限定承認は、相続放棄をした者を除く共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。(923条)

5、方式
ア、限定承認の場合
相続人は、限定承認をしようとするときは、熟慮期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。(924条)

イ、相続放棄の場合
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。(938条)
なお、相続開始前に相続を放棄することはできない。

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